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2019年 日本建築学会論文賞

2019年 日本建築学会論文賞

日本大学 湯浅昇教授
「表層コンクリートの品質に関する一連の研究 」

prof yuasa
湯浅昇教授

論文賞は、近年中に完成し発表された研究論文であって、学術の進歩に寄与する優れた論文に与えられる。

受賞理由
コンクリートの表層部の品質は、鉄筋コンクリート構造物の耐久性を左右する大きな要因である。そのため、古くから多くの研究がなされてきた。なかでも、養生の重要性を指摘する声は多く、養生条件を変えて強度や耐久性との関係を検討した例は数多く見られる。しかし、これらの研究の多くは養生の良し悪しに依存するコンクリート表層から内部に 至る物性変化を明らかにすることなく、マスとしてのコンクリートの強度や耐久性を扱ったものであった。

本論文は、受賞者らの研究グループが永年にわたり地道かつ極めて精力的に取り組んできた一連の成果をまとめたものである。はじめに、表層コンクリートの品質を理解するために必要な、各種物性の試験方法を開発している。

具体的には、含水率、強度、透気性、 中性化深さ、塩分量分布の定量的な測定方法を提案している。このうち、セラミックセン サを用いた含水率の測定方法は、養生が水分の移動におよぼす影響を検討するうえで必要 不可欠な表層における含水率の勾配の把握を可能とするもので、その技術は他の研究機関 にも公開、提供され、それぞれの研究の展開に寄与している。

次に、開発した試験方法を用い、養生条件と表層コンクリートの品質との関係を含水率 と細孔構造の観点から検討し、初期養生の際の乾燥により不均質性が形成されるメカニズ ムを解明している。すなわち、含水率分布と細孔構造の経時変化から、乾燥により水和が 阻害される実態を把握するとともに、その影響がおよぶ表層の範囲を具体的に示している。

また、細孔構造と圧縮強度の関係に基づいて、乾燥を受けたコンクリートの圧縮強度分布 を求め、表層の強度が内部に対して著しく低下することを明らかにしている。不均質性形成メカニズムの解明に続いて、表層コンクリートに要求される重要な性能で ある、外部からの劣化因子の侵入に対する抵抗性、および仕上げ材を接着する際の下地としての性能の観点から、初期の乾燥による水和の阻害の影響を検討している。劣化抵抗性に関しては、凍結融解抵抗性、中性化抵抗性などを対象とし、劣化促進試験結果と細孔構造との関係に基づいて、所定の抵抗性を確保するのに必要な湿潤養生期間を具体的に提示している。

下地としての性能に関しては、塗り床を対象に、剥離接着強さと細孔構造の関係などを検討し、不具合を発生させないためには初期湿潤養生を確保したうえで乾燥期間を取ることが重要であることを定量的に示している。 以上のように、本論文は、独自に開発した試験方法を駆使して表層コンクリートに不均 質性が形成されるメカニズムを実験的に明らかにしたうえで、表層コンクリートに要求される様々な性能の観点から必要とされる養生条件などを提示したものである。

今後の課題 として、理論的、解析的検討を充実させ一連の成果を体系化することが期待されるが、鉄筋コンクリート構造物の早期劣化が大きな社会問題となっている現在、実験的検討により現象を把握し耐久性向上に資する知見を集積することは急務であり、本論文の成果の一部が関連する学協会の規準類に反映されていることなどからも、その学術的、実用的価値は高く評価できる。

自らの研究分野に関しては

私の専門はずばり「コンクリート」。それをひとつの塊でみるのではなく、その内部と外では品質が異なるということから立脚し、強度、劣化を論じることに力を注いでいます。

それを解きほぐすキーワードは「水」と「細孔構造」です。これを言語化し、コンクリートの状態を論じることを考えています。

と述べている。

2019/07/18(木) 10:58:01|ひと|

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