「今の防水業界がこれでいいのか」「いい仕事をすること、社会的貢献をすることと、防水工事で利益をあげることは両立すべきだ」と考えるあなたに!

日本の「防水」文化

日本の「防水」文化

日本の「防水」文化

風土と人が組み合わされると文化が生まれます。
だから防水は文化となるのです。

全防協20周年記念誌

さる2月8日、社団法人全国防水工事業協会の設立20周年記念式典が行われた。田中享ニ東京工業大学名誉教授は、高山宏会長、来賓挨拶のあと「防水の役割は、建物とその中で暮らす人達の生活を守ること。建物を守ると言っても、単に雨漏りを防ぐのでなく、雨によるコンクリートの劣化を抑え、建物の長寿命化を実現する事。皆さんは建築の最前線で建物と中の人達の暮らしを守るために戦う人達です。」と述べて乾杯の音頭を取った。

そして20周年を記念して全防協が発刊した「全防協20年のあゆみ」に寄せた祝辞がこれ。
日本の「防水文化」です。

日本の「防水文化」

2012/03/27(火) 00:01:39|躯体保護と混凝土|

日本の「防水文化」

東京工業大学 名誉教授 田中享二

もう30年以上も前のことです。防水視察団の一員としてヨーロッパに連れて行っていただいたことがあります。団員は、防水施工のプロばかりという集団でした。オランダだったと思いますが、アスファルト防水の現場を訪ねました。砂付きルーフィングの露出防水でしたが、ルーフィングの重ね部分から黒いアスファルトが、うねうねとはみ出していました。ひとりがそれを見て、何と雑な仕事なのだとつぶやきました。私もそう思いました。日本の防水施工現場を何度も見せていただきましたが、重ねて張られたルーフィングからはみ出したアスファルトは、皮すきできれいに剥ぎ取られ、端部はきれいな一直線になっていました。何とも清々しい仕上がりでした。それに比べるとオランダのそれは何とも雑に思える仕上がりでした。ただ向こうにも言い分はあり、「はみ出したからといって防水性能には何ら影響を及ぼすものではない、だからそのままで良いではないか。わざわざ手間ひまかけて線をそろえる必要などない」という考えです。それもそうです。ただ日本人としては、それでは何とも気持ちが悪いのです。

いずれにしてもこれは決着のつかない話です。それは文化の問題だからです。防水は工学の一部であると同時に、建築学の一部でもあります。建築学は人間生活全体を取り扱う総合学問です。効率だけが尺度ではありません。伝統とか文化といった非効率な部分も大切にします。

防水材料は世界的にほぼ共通ですが、職人さんは千差万別です。オランダの職人さんはオランダ流、日本の職人さんは日本流で作ります。そのやり方の背景には、おのおのの国の伝統と文化があります。日本人はきめ細やかな気配りの中で仕事をしようとします。そうするなると言っても体がそう動いてしまうのです。防水層の納まりの仕事などは、もう芸術です。見ると感動します。

シーリング材でも似た経験があります。昔のシール職人さんの道具の写真を見せていただいたことがあります。目地仕上げのためのいろいろなサイズ、形状のへらが何本も用意されていたのです。たかがと言っては失礼ですが、シーリング材施工の最後に、単に表面をしごくだけに使われるへらです、1本あれば充分なように思うのですが、そうではないのです。宮大工と同じです。良い仕事をするためには、まずは道具からです。それらの背後にある精神は同じです。良い仕事をすること。これに尽きます。

わが国は、世界でも有数の多雨国です。防水に対する負荷が非常に高い国です。それに加えて台風があります。これがわが国の風土です。風土と人が組み合わされると、文化が生まれます。だから防水は文化となるのです。そして防水を「文化」化しているのは職人さん達です。このように考えると、世界にはたくさんの防水文化があるのが当然で、日本にも日本独自の防水文化があっても不思議ではありません。

最近の若者は小奇麗で楽な仕事を好み、防水なぞやりたがらないと嘆く人がいますが、決してそんなことはありません。防水のことをよく知らないので希望できていないだけです。ただきちっとした仕事だけはしたいと思っています。一方で最近は、経済論理に振り回されて、職人さん達に満足な仕事をさせにくい状況にあることも知っています。こういう時だからこそ、きちっとした仕事のできるように、全防協にはがんばってもらいたいと思います。それが防水文化を支えます。さらにその文化をつないでゆく次世代も育てる組織であってほしいと思います。20周年は素晴らしいことです。心よりお祝い申しあげます。これからも防水文化を育てるインキュベーターとしてますます発展されることを祈念いたします。

2012/03/27(火) 00:01:39|躯体保護と混凝土|

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