地震から建築を守るトライボロジー
地震から建築を守るトライボロジー
地震から文化財を守る
直動案内のトライボロジー
すり減ったリードオルガンの踏み板。東京・神保町学士会館ロビーの7ストップ式カワイオルガン。足踏みによってふいごで風箱に空気を送る。
「トライボロジー」とは摩擦を大きく、または小さく制御して、モノを滑らかに動かす技術である。建築との関わりでは、免振や曳家のほか、床の滑りや壁面の汚れの問題なども重要だ。屋根の分野では、先人たちは雨水の挙動を経験的に理解しながら屋根材の素材選び、固定方法、勾配などに生かし、屋根づくりの知恵を伝えてきた。
「屋根、防水、雨仕舞」をキーワードとする「ルーフネット」でも、このトライボロジーは取り上げたい分野でありながら、先送りになっていた。技術情報誌およびポータルサイト『ベアリング&モーション・テック』の編集長である橋浦克彰氏が、建築リフォーム&リニューアル技術誌に「建物の再生を支えるトライボロジ―技術」の執筆を開始した。今回は「地震から文化財を守る~直動案内のトライボロジー」を報告していたので、これを紹介させていただく。(テツアド―出版、月刊「リフォーム」2017年通巻395号転載)
概要:トライボロジー技術の花形は、何と言ってもベアリングだ。ベアリング=転がり軸受は「玉」や「ころ」などの転動体を用いて滑らかな回転運動を実現する重要な「トライボロジー技術」の一つだが、同様に転がり機構をを用いて滑らかな「直線運動」を実現するトライボロジーとして、「直線運動案内」がある。
建築物の免振ではこの方法が用いられることが多い。西暦710年に藤原宮から移された奈良・平城宮跡の復元工事が行われており、1998年に朱雀門が、2010年には大極殿が復元された。 大極殿では直動案内と積層ゴム、粘性体ダンパーを組み合わせた免振装置が使用されている。この号では直線運動案内技術(直動技術)を利用して地震から建築物や文化財などを守る「免振・制震機構」のしくみを紹介している。
2017/02/20(月) 21:43:40|建築のトライボロジー|