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上村克郎先生82歳のお話

上村克郎先生82歳のお話

ペンキは剥げる、タイルは落ちる、コンクリートはひび割れる。

上村克郎才の素敵な話
社団法人建築研究振興協会上村克郎顧問(82歳写真)がタイルの講演会を聞いた後こう挨拶した。

今のタイルの話を聞いて思い出したことがある。住宅公団が出来たのは50年前。公団の技術陣の間で、有名な言葉があった。それは「ペンキは剥げる、タイルは落ちる」というものだった。けだし名言である。「でも皆が真面目にやれば大丈夫」という。

こんな話でした。
 

タイルは落ちるのか?

今のタイルの話を聞いて思い出したことがある。住宅公団が出来たのは50年前。公団の技術陣の間で、有名な言葉があった。それは「ペンキは剥げる、タイルは落ちる」というものだった。40年くらい前の話で、誰が言い出したんだ、という話になって調べた事がある。

当時公団で仕上げ材を研究していた鈴木正慶さんだろうと見当をつけ、本人に聞いた。すると「違う」という。しかしこの言葉、蓋し(けだし)名言である。しかしここにも一つ付け加えたいものがある。それは「コンクリートはひび割れる」。これを加えると「ペンキは剥げる、タイルはおちる、コンクリートはひび割れる」となる。

確かにタイルはよく落ちた。昔のタイルは落ちないんだが、20~30年前のタイルはよく落ちた。北九州の公団住宅のタイルが落ち、大騒ぎになったのをきっかけに当時の建設省に事故調査委員会が出来て、委員長には東大の岸谷孝一先生が就任した。この成果一つがビルディングドクター制度だった。

この時、公団側でも別の調査委員会を作って私が委員長になった。そこで、左官やタイル職人に、「タイルというのは落ちるものなのか、どうすれば落ちないのか?」と聞いて回った。すると皆「俺がやれば落ちない!」と言う。

そんなに言うならやってみようと、当時普及していたALC版にモルタルを塗ってタイルを張って試験した。今から30年ほど前のことだ。一人は日左連(社団法人日本左官業組合連合会)の名人といわれる山崎さん。もう一人は比較のために、若い普通の職人さん。1年後、若い職人が張ったタイルは剥がれてきた。しかし名人の張った方は3年たっても、しっかりくっついて剥がれない。「そうか剥がれる剥がれないは技能の問題なのだ」ということが分かった。

コンクリートはひび割れるのか?

さてコンクリートの方はというと、建築学会は今年で130年になるんだけど、もう60年も前からひび割れが話題になっていました。毎年の建築学会総会の前に、研究協議会という会議をやります。毎年主要なテーマを選んで、ディスカッションするんです。今年ならきっと津波でしょう。過去60年間、10年に一度はコンクリートのひび割れが話題になっていました。コンクリートはなぜひび割れるか。 どうすれば防げるかを話題にしてきた。だからこれまで60年間に6回はシンポジウムをやってきたたことになるのですが、ほとんど進歩がない。

ある時また「いかにしてコンクリートのひび割れを防ぐか」というテーマで研究協議会を行っていて、私が司会をしていました。もういろんな人が、いろんなことを言いました。最後になって東大の偉いコンクリートの大先生が、その時司会をしていた私に向かって、「上村さんの見解を聞きたい」とおっしゃる。

急に振られて困りましたが、こう言いました。「コンクリート工事には、セメント、砂、砂利、生コン、鉄筋、型枠、養生などいろいろな役割がある。それぞれ各分野の人たち全員がまじめにやれば、ひび割れは防げる。まじめにやってないからひび割れる」と言いました。

そう言った後、私は実は内心、会場から「そうだそうだと賛同されることを期待していた。ところが、実際はシーンとしてしまって誰も賛同してくれない。さみしい想いをしたことがありました。でも後でその大先生とお会いした時「そうなんだよ。君の言うとおりなんだよ。まじめにやればひび割れは防げる」といってくれました。

先ほどのタイルも同じです。全員がまじめにやれば落ちないんだけれど、誰かがどこかで手を抜いているから落ちる。

先月「セメント新聞」の囲み記事で、ある現場所長で青森県コンクリート診断士の方が、私と同じことをおっしゃっていた。「ゼネコン、設計、施工会社、全員がまじめにやれば、ひび割れなんか起こらない」と。

みなさんいかがですか?
じゃあ日本中まじめじゃないのか。
真面目にやらないのか、それともやれないのか。
考えてみましょう。

昨年の同じ会での上村先生の挨拶も面白かったですね。こんな話でした。
>>献杯と乾杯とアインシュタイン

2011/06/01(水) 08:30:49|躯体保護と混凝土|

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