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防水の品質をどう確保する?

防水の品質をどう確保する?

学術講演で品質・評価など発表件数増加。
2017建築学会大会 第3報

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8月31日から9月3日まで、広島で開催された日本建築学会大会。材料施工部門の中では、維持保全分野の発表において、試験方法、調査、診断に関するテーマが42題と、ここ数年関心の高さを示している。品質確保のためにはその前段階として試験・評価方法の確立が前提だ。

例えば初日、8月31日午前中510室で行われた以下の発表などがその例である。

1402 ウレタンゴム系塗膜防水層施工における施工具に掛かる荷重と施工性 ○梅本康裕(フジタ)  
1403 ウレタンゴム系塗膜防水層の立上り部表面の仕上りに及ぼす粘度と施工具の影響 ○三浦大和(千葉工業大)  
1406 プロセス管理法を用いたウレタンゴム系塗膜防水の品質管 理 その3 施工実験概要および作業時間の分析 ○名知博司(清水建設)  
1407 プロセス管理法を用いたウレタンゴム系塗膜防水の品質管 理 その 4 膜厚の測定 ○法身祐治(長谷工コーポレーション)  
1408 ウレタンゴム系防水材の塗膜厚さ管理基準に関する一提案 ○山宮輝夫(大成建設)
1409 超音波法によるかぶせ工法で施工されたウレタン系塗膜防 水層の塗布厚さの推定 ○塚越雅幸(徳島大)  
1410 防水工事において施工管理の改善と職人教育を導入した物 件の10年間の経年調査結果 その1 物件及び施工管理 の概要 ○奈良圭一(日防技研)  
1411 防水工事において施工管理の改善と職人教育を導入した物 件の10年間の経年調査結果 その2 施工時の取組みと 改善及び点検記録の分析・検証結果 ○玉田雄次(匠リニューアル技術支援協会)。

上の写真は、ルーフネットが注目した、防水工事店である日防技研㈱奈良圭一氏ら(建研・国総研・千葉工大・田島ルーフィング・マサル・匠リ協など)が発表した「防水工事において施工管理の改善と職人教育を導入した物件の10年間の経年調査結果」である。
発表者によると、
建築物の大規模修繕において施工管理はその後の耐用年数に大きな影響を及ぼす要因の一つであり、長寿命化やコスト削減を図る上で合理的な管理手法が求められている。しかし、実際には有効な管理手法がどのように実践されているか、その実態は明らかにされていない。そこでウレタン防水工事を一例として取り上げ、防水の耐久性に大きく関わる膜厚を尺度とし、屋上防水工事において従来の施工管理を見直し、職人教育を実施した物件の10 年間の点検記録を分析・検証した。

1410(第1報)では、塗布量管理の改善だけではウレタン防水の十分な膜厚確保ができないことが、膜厚測定結果から判明したことを受け、職人参画の元、膜厚確保を主目的とした品質計画を策定し、施工時に品質計画が適時適切に改善されるシステム及び施工体制を構築した。
1411(第2報)では、物件・工事概要及び施工管理の見直しについての取組み・改善事項と点検記録の分析・検証結果について述べている。今回の点検結果より得られた知見として以下の点を挙げている。

  1. 職人が積極的に問題提議や改善提案のできる職人参画型施工体制構築と見える化及び繰り返しの改善が防水層の延命化に有効な手段となる可能性が示された。
  2. 品質の見える化教育は、職人の問題意識・改善意欲が向上し、8 ヶ月程度の短期間で経験の浅い職人や現場管理者のスキルアップに十分効果的であることがわかった。
  3. ものづくりに参画した職人が点検から得た情報を施工にフィードバックすることで更なる改善が期待できることから、保全サイクルを十分に考慮した施工管理システムの構築が重要であり、そのための人材及び技術面からの総合的な環境整備が望まれる。

職人の意識と技能が、出来上がった防水層の品質性能にどの程度影響し、防水層の長寿命化に貢献するか、を明らかにしようとする、極めて冒険的、意欲的な研究である。

2017/09/07(木) 21:06:10|ニュース|

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