保存か建て替えか 中銀カプセルタワービル 3
保存か建て替えか 中銀カプセルタワービル 3
メタボリズムは知らなくてもカプセルは好き。
自己表現の技に長けた饒舌な建築家の言葉はしばしば凡人を途方に暮れさせる。中でも群を抜く黒川紀章は、「私の建物がなくなっても私の思想は残る」といって100冊の著作を残した。(黒川建築都市設計事務所のサイトで、国内56の、海外44の著作のリストがみられる。http://www.kisho.co.jp/page/315.html)
8条からなる「カプセル宣言」がある。「従来、社会を構成する単位は夫婦であった、しかし今や(注:ホモ・モーベンスの発刊は1966年)その単位は個人である。個人の空間とは何か」黒川紀章はこのことを見つめることが、カプセル論のスタートになるとした。
カプセルは変化し、居住者は様変わりする。中銀カプセルタワービルの居住者の中に、メタボリズムというイズムとは無縁だが、カプセルを愛し、ひたすら存続を願う人が現れ、増殖し、そんな居住者がばしば、カプセル内の飲み会で話し合う。保存運動が立ち上がり、賛同者が幅広く集まる。いったん否決されたカプセルの交換を含む大規模修繕を再提案し、有志による修繕を実施してしまう。
黒川紀章は「我々が追球したいのは、住民の参加、住民のセルフエイドシステムを刺激する原理」といった。今カプセルの住人は、しっかり「刺激」され、「セルフエイドシステム」が発動し、「オーナーズエイド」が動き初めている。
月刊「リフォーム」2016年10月号から、保存か建て替えか、で紛糾する世界的に著名な中銀カプセルタワービルの連載が始まった。本コーナーでは、その記事を順次転載している。今回は3回目、2016年12月号より。
2016/12/16(金) 21:50:05|歴史的建物を守る|